ニュージーランドのスポーツ団体50以上が政府の新法案に強く反対している。オンラインカジノギャンブル法案により、草の根スポーツへの年間1億7000万NZドル(約170億円)の資金が失われる恐れがあるためだ。

ニュージーランドの国会議事堂

地域スポーツ資金が断たれる危機

現在ニュージーランドでは、パチンコ機(ポーキーマシン)の収益から年間約3億5000万NZドル(約350億円)が地域団体に分配されている。このうち約半分が地域のスポーツクラブや競技団体に流れている。

しかし6月にブルック・ファン・フェルデン内務大臣が提出したオンラインカジノギャンブル法案では、海外事業者に地域貢献を義務付けていない。現行制度とは異なり、オンライン賭博からの収益が地域スポーツに還元される保証がないのだ。

サイクリング・ニュージーランドのマーティン・スネッデン会長は法案を厳しく批判した。

「これは政府による狂気の沙汰だ」

「スポーツは何十年もの間、地域ギャンブル助成金によって繁栄してきた。その資金はすべてクラブに行くのであり、プロスポーツではない」

スネッデン氏は長年にわたるスポーツ資金調達システムの重要性を強調した。

7月に第一読会を通過 来年オークション予定

法案は7月に第一読会を83対39の賛成多数で通過した。現在は特別委員会で審議中で、8月17日まで一般からの意見募集を受け付けている。

法案が成立すれば、最大15の海外オンラインカジノ事業者にライセンスが発行される。ライセンスは3年間有効で、2026年にオークション形式で配布される予定だ。

法案には年齢確認要件や未成年者保護のための広告制限、ギャンブル依存症対策サービスへの課税などが含まれている。しかしスポーツや地域団体への資金配分に関する条項はない。

スポーツ界は一致団結して反対

スネッデン氏は政府との事前協議がなかったことも問題視している。

「スポーツ分野との協議はなく、このようなことが起こるという警告もなかった」

多くのクラブは既に運営コストの増加、スポンサーシップの減少、地方自治体からの支援削減に直面している。スネッデン氏は緊急性を訴えた。

「これが地域資金調達に打撃を与えることは明らかだ。すでに明確なことを確認するために3年待つのか、それとも今行動して海外事業者からの資金を将来に備えるのか?」

スポーツ団体は法案の初期草稿には海外事業者の地域貢献条項があったと主張している。彼らは事業者への義務付けを求めている。

「政府は海外事業者に対して、ニュージーランドで営業したいなら貢献することになると言うべきだ」

政府は税収と依存症対策を重視

ファン・フェルデン大臣は法案の意図について説明した。

「ニュージーランド人は何千もの海外ギャンブルサイトに合法的にアクセスできる。しかし市場は規制されていないため、プレーヤーの安全基準もギャンブル被害最小化の監視もない」

大臣は規制によってオンラインギャンブルをより安全にし、税収とギャンブル依存症対策費を確保することが目的だと述べた。しかし地域団体への資金配分と賭博収益を関連付けることは「perverse incentive」(逆インセンティブ)を生む可能性があると懸念を示している。

法案は今後複数の審議段階を経る必要があり、スポーツ界は引き続き政府への働きかけを続ける方針だ。

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