総務省は20日、違法オンラインカジノ対策の有識者会議で、サイトへの接続を強制的に遮断する「ブロッキング」の導入について慎重な検討を続ける方針を示した。憲法が保障する「通信の秘密」への抵触が懸念される中、他の対策を優先実施する考えを明らかにした。年内にも最終的な方向性を判断する予定だが、法的課題の解決が導入の鍵を握る。

総務省、オンラインカジノ「強制遮断」導入に慎重姿勢―年内判断も憲法問題で議論紛糾

他の対策を優先、段階的検証を実施

会議では中間論点の原案が示され、ブロッキング以外の対策を優先的に実施することが確認された。具体的には決済手段の抑止、意識啓発、取り締まり強化などを先行する。利用者の同意に基づく「フィルタリング」の浸透や、SNS運営事業者による誘導サイトや広告の削除促進も重視する方針だ。

ブロッキングについては4段階の検証作業を経ることが決まった。他の対策を尽くしたか、得られる利益と失われる利益の均衡、実施する場合の法的根拠、適切な枠組みの順で検討を深める。

憲法問題と技術的限界が壁

ブロッキングの最大の課題は憲法問題だ。導入すればインターネット利用者全員の閲覧先を確認することになる。「通信の秘密」に抵触する恐れがある。

有識者会議に参加する森亮二弁護士は「必要性や有効性、法益のバランスのすべてにおいてブロッキングができる状況ではない」と指摘した。技術的な問題もある。一部スマートフォンの特殊機能を使えば遮断をすり抜けられるとの指摘もあり、実効性に疑問符が付く。

若年層への「予防効果」に期待

一方で、ブロッキングには若年層などの利用を初期段階で止める「予防的効果」があるとの見方も示された。欧米など10か国以上で導入例があり、フランスなどの法制度を参考にした新規立法の方向性もにじんだ。

深刻化する被害実態

警察庁の推計によると、国内でオンラインカジノの利用経験がある人は337万人に上る。年間の賭け金は計1兆2423億円と巨額だ。未経験者も含め43%の人が「違法性の認識がなかった」との調査結果もある。

経験者の約6割はギャンブル依存症の「自覚がある」と回答。46%は借金があった。タレントやスポーツ選手の検挙が相次ぎ、「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」の関与も疑われている。

法改正で包囲網強化

18日に成立した改正ギャンブル等依存症対策基本法では、カジノサイトに誘導するリーチサイトやネット広告を違法と位置付けた。警察庁は同法施行までに「インターネット・ホットラインセンター(IHC)」の運用ガイドラインを改定する。関連投稿を闇バイト募集などと同じ「違法情報」に分類する方針だ。

警察幹部は「違法情報とすることでSNSの運営事業者らによる積極的な削除が進み、利用を防げる」と期待を示した。

今後の展開

有識者会議は今夏に中間論点をまとめ、年末の最終とりまとめを目指す。総務省は改正法の効果も見極めながら、ブロッキング導入の可否を最終判断する。政府全体での包括的な対策検討も求められており、憲法問題をクリアできるかが焦点となる。

Trending